連言錯誤とは?詳しい説明ほど起こりそうに感じる判断の落とし穴
企画会議で、「新商品の発売が遅れる」とだけ聞くより、「部品の納入が遅れ、新商品の発売も遅れる」と説明された方が、具体的で起こりそうに感じることがあります。
しかし確率として比べると、後者には「部品の納入遅れ」と「発売遅れ」の二つの条件があります。二つとも起こる確率が、「発売が遅れる」という一つの条件だけの確率を上回ることはありません。
このように、複数の条件が同時に成り立つ出来事を、その一部の条件だけからなる出来事より起こりやすいと判断することを、連言錯誤(conjunction fallacy)と呼びます。詳しい説明はもっともらしさを高めることがありますが、条件が増えるほど確率まで高くなるわけではありません。
連言錯誤とは?二つの条件は一つの条件より起こりやすくならない
連言錯誤を理解するには、まず確率の基本的な関係を押さえると分かりやすくなります。
出来事Aを「発売が遅れる」、出来事Bを「部品の納入が遅れる」とします。
- A:発売が遅れる
- AかつB:発売が遅れ、なおかつ部品の納入も遅れる
「AかつB」に当てはまるケースは、必ずAにもBにも含まれます。したがって、AかつBの確率は、Aの確率もBの確率も超えません。数式では P(A∩B) ≤ P(A)、かつ P(A∩B) ≤ P(B) と表せます。これは連言則と呼ばれる確率の基本的な関係です(Tversky & Kahneman, 1983)。この記事では、このうちAとの比較を中心に考えます。
ここでいう「A」は、「Aだけが起こり、Bは起こらない」という意味ではありません。Bが起きても起きなくても、Aが起きるすべてのケースを含みます。この読み方を取り違えると、連言錯誤に見える回答の一部は、言葉の解釈の違いから生じる可能性があります。
詳しい説明が「もっともらしく」見えることがある
連言錯誤では、追加された条件が背景情報によく合うほど、二つの条件を組み合わせた説明が自然に感じられることがあります。
TverskyとKahnemanは、この現象を説明する要因として代表性を挙げました。代表性とは、ある説明が、その人や状況の特徴にどれほど「それらしく」当てはまるかで判断することです。もっともらしさと確率は同じではありませんが、判断するときに両者が混ざると、詳しいシナリオを高く評価してしまいます(Tversky & Kahneman, 1983)。
ただし、連言錯誤を代表性だけで説明できると決まったわけではありません。質問文の読み方や、確率をどう尋ねるかによって回答が変わる研究もあります。
研究で分かっていること
連言錯誤は、複数の実験で確認されてきました。一方で、誤りの起こりやすさは、問題の表現や回答方法によって変わります。研究からは、「人はいつも連言則を理解できない」という単純な結論ではなく、もっともらしさ、言葉の解釈、回答形式が判断に関わることが分かります。
Linda問題では、二つの条件を含む選択肢が高く評価された
TverskyとKahnemanは1983年、後に「Linda問題」として知られる課題を報告しました。参加者には、社会問題への関心などを含む女性の人物説明を示し、その後の職業や活動について確率を判断してもらいました。
重要な比較は、次の二つです。
- Lindaは銀行員である
- Lindaは銀行員であり、かつ女性運動に積極的である
UBCの学部生142人にこの二つを直接比較してもらうと、85%が「銀行員かつ女性運動に積極的」の方を起こりやすいと判断しました。しかし、後者に当てはまる人は必ず「銀行員」にも含まれるため、確率として後者が前者を上回ることはありません(Tversky & Kahneman, 1983)。
この結果は、人物説明によく合う詳しい選択肢が、より「それらしく」見えると、集合の包含関係よりその印象が優先されることがある例です。
「確率」ではなく頻度で考えると、誤りが減る場合がある
この研究には、質問の言葉自体が誤解を招いているのではないかという議論があります。HertwigとGigerenzerは1999年、日常語の「probability(確率・可能性)」には数学的な意味以外の読み方があり、それがLinda問題への回答に関わると検討しました。
研究では、「確率」を尋ねる代わりに、ある人数の中で何人に当てはまるかという頻度で尋ねると、連言則に沿う回答が増えました。著者らは、頻度表現が数学的な包含関係を捉えやすくする理由の一つとして、言葉の解釈が絞られることを挙げています(Hertwig & Gigerenzer, 1999)。
つまり、誤答をすべて「確率が分からないから」とみなすのは適切ではありません。問題の提示方法によって、使われる判断の仕方そのものが変わる可能性があります。
言葉の誤解を減らしても、連言則違反は残った
一方、言葉の解釈だけでは説明しきれない結果もあります。
Bonini、Tentori、Oshersonは2004年、どちらの出来事に賭けるかという形式を使い、「A」を「AかつBではない」と読み違えにくくし、同時に「AかつB」を本当に二つの条件の組み合わせとして読むよう設計した実験を行いました。それでも、連言より単独の出来事を優先すべき場面で、連言を選ぶ回答が頻繁に見られました(Boniniら, 2004)。
この研究は、Linda問題のような結果を、単に「AをAだけという意味に読み違えた」と説明するだけでは不十分であることを示します。
回答方法によっても連言錯誤の起こりやすさは変わる
WedellとMoroは2008年、選択肢から一つを選ぶ方法と、数値で確率や頻度を見積もる方法などを同じ参加者で比較しました。二つの実験では、数値を見積もる形式の方が、選択形式より連言錯誤が少なくなる傾向が確認されました。一方、「確率」と「頻度」のどちらの言葉を使うかだけでは、誤り率は変わりませんでした(Wedell & Moro, 2008)。
研究全体を見ると、頻度表現や数値化は役立つ場合がありますが、それだけで必ず誤りがなくなるわけではありません。連言錯誤の起こり方は、問題の内容と回答形式の組み合わせにも左右されます。
仕事での具体例と活かし方
以下は、連言錯誤を仕事の判断で見つけるための説明用の仮の場面です。
あるチームが、新サービスの公開時期についてリスクを検討しています。担当者から次の二つの予測が出ました。
- A:新サービスの公開が予定より遅れる
- AかつB:外部ベンダーの仕様変更が発生し、新サービスの公開も予定より遅れる
最近ベンダーとの調整が難航していると、二つ目の方が具体的で説得力のある予測に見えるかもしれません。しかし、「ベンダーの仕様変更によって遅れるケース」は「理由を問わず公開が遅れるケース」の中に含まれます。したがって、二つ目の確率が一つ目を上回ることはありません。
以下は、連言則と研究結果をもとにした実務上の確認手順です。この5手順自体の効果を直接検証した研究ではありませんが、詳しいストーリーと確率を分けて考えるための整理に使えます。
- まず、広い出来事を一文で書く。
「公開が遅れる」のように、判断したい結果そのものを先に置きます。 - 追加条件を別に書く。
「ベンダーの仕様変更が起きる」を追加し、「公開遅延かつ仕様変更」として二つの条件になっていることを見える形にします。 - どちらがどちらに含まれるか確認する。
「100件の公開案件があるとしたら、仕様変更もあり遅れた案件は、遅れた案件全体の中に入るか」と考えます。入るなら、連言の件数は全体を超えません。 - 原因のもっともらしさと結果の確率を分ける。
「ベンダー変更が遅延原因として有力」という判断と、「遅延全体よりベンダー変更を伴う遅延の方が起こりやすい」という判断は別です。 - 可能なら順位だけでなく数字でも考える。
「どちらが起こりそうか」だけでなく、「100件なら遅延は何件、そのうち仕様変更を伴う遅延は何件か」と置いてみます。研究では、数値を見積もる形式で連言錯誤が減った条件があります。ただし、数字にすれば必ず正しくなるわけではありません。
詳しいシナリオは、原因を考えたり対策を準備したりするためには役立ちます。問題になるのは、説明が具体的になったことで、そのシナリオ自体の確率まで高くなったように感じることです。予測を比べるときは、まず条件の包含関係を確認し、その後で各条件の根拠を検討すると整理しやすくなります。
参考文献・出典
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1983). Extensional Versus Intuitive Reasoning: The Conjunction Fallacy in Probability Judgment. — 連言則と連言錯誤を整理し、Linda問題などを用いて代表性と確率判断のずれを検討した研究。
- Hertwig, R., & Gigerenzer, G. (1999). The ‘Conjunction Fallacy’ Revisited: How Intelligent Inferences Look Like Reasoning Errors. — 「確率」という言葉の解釈と頻度表現が連言則への回答にどう関わるかを検討した研究。
- Bonini, N., Tentori, K., & Osherson, D. (2004). A Different Conjunction Fallacy. — 「A」の誤読を起こしにくい賭けの課題でも連言則違反が残るかを検討した研究。
- Wedell, D. H., & Moro, R. (2008). Testing Boundary Conditions for the Conjunction Fallacy: Effects of Response Mode, Conceptual Focus, and Problem Type. — 選択・数値推定、確率・頻度などの回答形式が連言錯誤に与える影響を比較した研究。