難しい仕事を後回しにして簡単な仕事ばかり選ぶとき|着手の負担を小さくする

仕事の進め方・習慣
Psychology Laws 編集部

重要な提案書や、初めて担当する分析の仕事に取りかからなければならない。それでも気づくと、メールの返信や簡単な確認作業ばかり片付けている。そんなときは、単に「もっと集中しよう」と決めるより、難しい仕事の何が着手の負担になっているかを確かめ、最初に行う小さな作業を具体的に決めるほうが、次の行動を考えやすくなります。

ただし、簡単な仕事に期限が迫っている場合や、難しい仕事に必要な情報・承認がまだない場合は、順番を変える理由があります。先延ばしと、事情のある優先順位の変更を分けることから始めましょう。

難しい仕事より、簡単な仕事を選びたくなるのはなぜか

説明用の仮の場面です。金曜日が締切の新しい顧客向け提案書を作る予定なのに、担当者は午前中ずっと、すぐ返せるメールや定型の入力作業を進めています。提案書は重要だと分かっていますが、「何を根拠に提案するか」「どこから書けばよいか」がはっきりせず、開くこと自体が重く感じられます。

簡単な仕事は、次の動きと終わりが見えやすい一方、難しい仕事は、判断を間違える不安や手順の不明確さが最初に立ちはだかることがあります。その場では取り組みやすい作業に移るほうが楽でも、大切な仕事の負担は残ります。

Steel(2007)は、先延ばしに関する研究を691の相関関係から整理し、仕事や課題を不快・面倒と感じることと先延ばしに、一貫した関連があると報告しました。ただし、主に関連をまとめた結果であり、ある社員が後回しにする原因を一つに特定するものではありません。

また、Pychylら(2000)は、大学生45人に締切前の5日間、日中繰り返し作業状況を尋ねました。参加者は、不快で、ストレスがあり、難しいと感じる課題を後回しにし、その間はより快い活動を選ぶ傾向がありました。ただし、この調査では先延ばしと、その時点の肯定的・否定的な気分との明確な関連は見られていません。

SiroisとPychyl(2013)は、こうした先延ばしを、目先の嫌な感情を避けようとする行動として理解する見方を示しています。これは心理を説明する枠組みであり、職場の誰もが気分をよくするために仕事を避けていると証明したものではありません。目先の楽さを重く感じる選択については、現在バイアスの解説も参考になります。

始める前に、何が負担なのかを確かめる

難しい仕事が残っている事実だけでは、「逃げている」とは判断できません。次の三つを見比べると、取るべき行動を分けやすくなります。

  • 本当に今着手すべき仕事か。納期、ほかの人の作業への影響、今日中に必要な回答を確認します。短時間で終わる仕事でも今日が期限なら、先に処理することが合理的な場合があります。重要な仕事を後回しにすると支障が出るなら、着手する時間を確保します。
  • 最初の動作が決まっているか。「提案書を作る」だけでは、調査、構成、計算のどこから始めるか決まりません。最初の10分に実際に手を動かせることを一つ挙げられるかを確かめます。挙げられなければ、作業そのものではなく、最初に必要な情報の整理が入口になります。
  • 気持ちの負担と、業務上の不足はどちらか。間違える不安が大きいのか、資料・知識・権限が不足しているのかを分けます。必要なデータや判断権限がなければ、気合いで着手するより、確認先や相談事項を決めることが先です。

予定した時間になるたび別の簡単な作業を選ぶなら、過去数回の「予定した開始時刻」「そのとき行った作業」「延期した理由」を短く記録するのも一案です。急な依頼が実際に続いたのか、着手が不明確なまま止まったのかを、記憶だけに頼らず確かめられます。

着手の負担を小さくして、難しい仕事に入る方法

次は研究を参考にした実務上の提案です。仕事で「10分に区切れば必ず先延ばしが解消する」と直接確認された手順ではありません。着手を小さく設計し、実際に動けたかを確かめて調整します。

  1. 取りかかる仕事を一つ選ぶ。締切と影響を見て、今進める必要のある難しい仕事を一つ決めます。急ぎの問い合わせに対応する必要がある日は、その時間も予定に織り込みます。
  2. 「完成」ではなく、最初の10分でできる動作を決める。「提案書を完成させる」ではなく、「顧客の条件を資料から三つ抜き出す」「見積もりに不足する数字を二つ書き出す」など、着手したか判断できる単位にします。10分は説明用の目安であり、必要なら調整します。
  3. いつ・どこで始めるかと結び付ける。「今日どこかでやる」ではなく、「午後の定例会議が終わったら、自席で提案書のファイルを開き、顧客条件を確認する」と予定します。別の仕事を始める前に、最初の動作を思い出せる形にします。
  4. 一区切り後に次の障害を判断する。着手できたら、次に書く項目と必要な確認相手を決めます。10分で止まった理由が資料不足なら問い合わせ、方法が分からなければ経験者に相談します。予定を守れなかった場合も、実際の割り込みと作業への抵抗感を分けて見直します。

三つ目の方法に関連して、GollwitzerとBrandstätter(1997)は、大学生86人に休日中の報告書作成を頼み、「いつ・どこで書くか」を決め、その場面を思い描くなどの準備をする群と、そうしない群を無作為に分けました。提出された報告書のうち条件を確認できたものでは、準備した群のほうが指定期間内に書かれた割合が高かった一方、報告書を提出した人の数自体には明確な差がありませんでした。仕事の成果や全員の完了率まで保証する結果ではありません。

同じ研究の別の実験では、適切な行動を取れる知識が乏しい参加者には、計画が成果を高めるとは限りませんでした。最初の行動を予定することと、その行動を実行するための情報・技能を整えることは別です。

たとえば上の提案書なら、「火曜15時、会議後に過去の提案資料を開き、今回必要な条件を三つ書き出す」と決めます。そこで価格条件が不足していると分かれば、次は上司への確認が仕事になります。簡単な作業を禁止するのではなく、難しい仕事の入口をはっきりさせ、必要な支援にもつなぐ進め方です。

参考文献・出典