低評価レビューを例外として無視していない?内容と発生条件を調べる

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Psychology Laws 編集部

商品への低評価が届いたとき、「ほかは高評価だからこの人だけの例外」と考えて、本文をよく調べずに済ませていませんか。低評価が少数でも、そこで書かれた問題が起きていないとは限りません。ただし、一件の低評価がすべての購入者に共通する問題だと決めつけ、すぐ商品全体を変更するのも適切ではありません。

星の数だけを見て判断せず、何が起きたと書かれているか、どの商品や利用条件で起きたのか、それを確かめる記録はあるかを整理します。調査の結果、問題が確認できればその範囲で対応し、条件がまだ分からなければ確認を続けます。

低評価を「例外」と片づけたくなるとき、どんな心理が関係するか

例えば架空のネットショップで、アプリと連携する家電に「初期設定で接続できず、使えなかった」という星1つのレビューが届いたとします。高評価が多いことを知っている担当者は、「この人だけ操作を間違えたのだろう」と考えるかもしれません。しかし、特定の端末やアプリ版で問題が起きている可能性もあります。これは説明用の仮の場面で、実際の企業の事例ではありません。

製品に自信を持つこと自体は問題ではありません。ただし「品質には問題がない」という予想が先にあると、合わない情報だけに厳しい評価を下す場合があります。

自分の見方に合わない資料を厳しく評価する傾向

Lord・Ross・Lepper(1979)は、死刑の抑止効果への賛否が分かれる大学生48人に、賛否それぞれを支持するように見える二つの研究資料を示しました。参加者は自分の立場に合う資料をより説得力があると判断し、立場に合わない資料に厳しい評価をする傾向を示しました。

この実験は政治・社会問題をめぐる資料評価であり、企業の低評価レビュー処理を直接調べたものではありません。それでも、高評価には素直に納得し、低評価だけ「特殊な人の意見」と考えていないか点検する材料になります。情報を既存の見方に沿って評価しやすい仕組みは、確証バイアスの解説でも扱われています。

もちろん、レビューへの疑問がすべて偏った判断という意味ではありません。書かれた内容が誤っている可能性もあります。高評価にも低評価にも、同じように事実確認を行います。

星の平均も、全購入者の経験そのものではない

Hu・Pavlou・Zhang(2017)は、オンラインレビューの平均評価が、商品を買う人の偏りと、強い肯定・否定の意見を持つ人ほどレビューを投稿しやすい偏りの影響を受けることを、数理モデルと実際のデータに基づいて検討しました。レビューの平均点は、商品の品質をそのまま示すとは限らないという結果です。

これは「低評価の人は大げさだから無視してよい」という研究ではありません。レビューを書かなかった購入者の経験は、レビュー欄だけでは分からないということです。高評価が多数でも問題がない証拠にはならず、低評価の数をそのまま不具合の発生率とも扱えません。

星の数より、どんな経験が書かれているかを読む

MudambiとSchuff(2010)は、Amazonの6商品に寄せられた1,587件のレビューを分析しました。レビューが「役に立つ」と評価されるかどうかには、星の極端さ、本文の詳しさ、商品が使ってみないと分かりにくい種類かどうかが関係していました。使った経験が重要な商品では極端な評価より中程度の評価が役立つと見られやすく、本文が詳しいほど有用と評価される傾向もありました。

ただし、この研究が扱ったのはレビューを読んだ人による有用性の評価であり、書かれた不具合が事実かどうかではありません。星が1つだからと切り捨てず、詳しいから必ず正しいとも決めつけず、確認できる事柄を探します。

低評価レビューの本文から、まず何を切り分けるか

「最悪だった」という評価の言葉と、「設定画面で次へ進めなかった」という出来事の説明を分けます。次の表は架空のレビューを使った例です。

書かれていたこと(仮) 分からない条件 確かめる材料
「アプリにつながらない」 使った端末、アプリ版、設定の段階 対応端末の仕様、問い合わせ・障害記録
「箱が壊れて届いた」 商品自体の損傷、発送・配送の状態 出荷検品、梱包方法、配送記録
「写真と実物が違う」 色・寸法・付属品など何が違うか 注文した型番、掲載写真、商品仕様

どの指摘も、レビューだけで原因は確定しません。顧客の操作ミスが疑われる場合でも、初めての人には説明が分かりにくい可能性があります。反対に、対応していない端末を使っていたことが確認できれば、機器の故障とは違う問題です。その場合も、対応条件が購入前に分かりやすく示されていたかを確かめます。

追加情報が必要なら、公開コメント欄に注文番号や連絡先を書いてもらうのではなく、安全な問い合わせ窓口で確認するなど個人情報に配慮します。確認できない情報は、想像で埋めず「未確認」と記録します。

発生条件と実際の記録を、どの順番で照らし合わせるか

低評価を受けた担当者が確かめるのは、投稿者の性格ではなく、同じ出来事が繰り返される条件です。次の手順は研究を参考にした実務上の提案で、この順番自体の成果が実験で確かめられたわけではありません。

  1. 対象を特定する。 製品の型番、販売時期、アプリや説明書の版を確認します。過去に解消した問題と現在の問題を混ぜないためです。
  2. どの場面で起きたか確かめる。 利用開始時か、通常利用中か、配送時か。端末や通信環境など、症状に関係しそうな条件を確認します。まだ分からないものは「不明」とします。
  3. 別の記録を調べる。 同じ症状の問い合わせ、返品理由、検品や障害の記録があるか確認します。一人がレビューと問い合わせの両方を出しても、独立した二件の不具合として数えません。
  4. 可能なら条件をそろえて確かめる。 特定のアプリ版で接続できないという指摘なら、同じ端末・版で再現するかを調べます。再現しなければ直ちに「問題なし」とせず、違う条件がないか見ます。

商品の安全性、個人情報、誤請求など、影響が重大な指摘は、レビューが一件でも早急に担当部門へ共有し、必要な確認・対応を始めます。件数が少ないことと問題が軽いことは同じではありません。

複数のレビューを分類したとき、件数をどう読むか

例えば、アプリ連携型家電の低評価レビューが最近12件あり、内容は次のようだったとします。すべて説明用に作った架空の件数です。一件につき主な指摘を一つ選んだ仮定で、実際の販売実績ではありません。

主な指摘 低評価レビューの件数(仮) 次に調べること
初期設定で接続できない 7件 端末、アプリの版、初期設定の手順
梱包や配送時の破損 3件 梱包方法、配送経路、出荷時期
掲載写真と実物の違い 2件 写真の版、型番、説明文
合計 12件 問題別に記録を照合

この場合、接続への指摘は12件中7件です。7÷12=約58%ですが、これは低評価レビューの中で接続について述べた割合であり、全購入者の約58%が接続に失敗したという数字ではありません。レビューを書かなかった人の経験は含まれていません。複数の問題を書いたレビューや重複投稿がないかも確認が必要です。

そこで、同じ時期の販売・利用件数や、対象となる型番・版ごとの問い合わせを確認します。必要に応じてレビュー投稿者以外からも、同じ条件で利用した経験を集めます。ただし、それらの回答にも対象者の偏りがあり得るため、確認できた範囲だけで判断します。

例えば接続の問題が特定版に集中していれば、その版の検証と案内を優先します。配送の指摘は製品機能の変更より、梱包や配送記録を調べる方が適切かもしれません。件数が少なく条件も分からない場合は、無理に原因を一つに決めず追加確認に進みます。

確認できた内容を、どの対応につなげるか

低評価を無視しないことは、すべての要望をそのまま採用することではありません。確認済みの事実と、まだ仮説の段階にあることを分け、次の行動を選びます。

分かったこと 考えられる行動
同じ条件で不具合が再現し、記録でも確認できた 影響範囲を調べ、必要な修正と該当する顧客への案内を進める
故障は確認できないが、仕様の説明を誤解しやすい 対応条件・商品説明・初期設定の案内を見直す
レビューに必要な条件が書かれていない 追加情報を確認し、分からない点を残して継続調査する
特定の利用条件に限る問題だと確認できた 該当条件への注意・個別対応と、商品全体の変更を分けて検討する

レビューへ返信するときも、原因を確認できていないなら「操作方法に問題があります」と決めつけず、「詳しい状況を確認したい」「この条件について調べている」など、確かめられたことだけを伝えます。重大な不具合や安全上の指摘がある場合は、別途必要な対処を優先します。

会議で「星1つはごく少数なので例外です」と言われたら、「件数だけでは判断できません。何が起きたという声か分け、同じ条件での問い合わせや利用記録を見ませんか」と提案できます。これは仮の会話例で、研究でこの言い方の効果が検証されたわけではありません。

低評価レビューは全顧客の声をそのまま表す統計でも、捨ててよい雑音でもありません。内容を読み、発生条件を調べ、裏づけに応じて改善範囲を決めることで、少数だから無視することも、一件で全体を変えることも避けられます。

参考文献・出典