難しい言葉の商品説明は価値を伝えられる?顧客の理解を確認する

マーケティング・集客
Psychology Laws 編集部

商品を詳しく説明しようとすると、専門用語や機能名が増えがちです。しかし、難しい言葉を使うだけで商品の価値が伝わるわけではありません。反対に、すべての専門用語をなくすことが正解とも限りません。

大切なのは、顧客が「その商品で何ができるか」「自分の仕事や生活のどこで役立つか」「利用するための条件は何か」を正しく理解できることです。説明を読んだ感想だけでなく、顧客が自分の言葉で使い方や制約を説明できるかを確かめると、直すべき箇所が見えてきます。

専門的で正確な説明でも、価値が伝わらないことがあるのはなぜか

例えば、架空の顧客管理サービスの販売ページに「CSV一括エクスポート対応」「ロール別の権限制御」と並んでいたとします。開発や運用に詳しい担当者には自然な表現でも、初めて業務ソフトを導入する人は「毎月の顧客一覧をまとめられるのか」「担当者ごとに見せる情報を分けられるのか」という、自分に必要なこととの関係が分からないかもしれません。これは説明用の仮の場面で、実際の商品についての記述ではありません。

説明を作る側は製品をよく知っているため、言葉の意味や使い方を顧客も知っていると思いやすい場合があります。こうした知識の差を見落とす心理は、知識の呪いという考え方と関係します。ただし、難しい表現があるというだけで、作成者がこの心理状態にあると決めつけることはできません。

Hinds(1999)は、作業に詳しい人、中程度の経験者、初心者などに、初心者が課題を終えるのに必要な時間を予測させる研究を行いました。観察による研究と経験の程度を操作した研究の両方で、経験が豊かな人ほど初心者に必要な時間を正確に見積もれず、見積もりを改善する働きかけにも抵抗が見られました。これは商品説明の実験ではありませんが、説明者の「これくらいは分かるはず」という見込みを、顧客の理解の証拠にしない理由になります。

専門用語は、内容の評価に影響する場合がある

Özdinç(2022)は、若い化粧品消費者を対象とする4つの実験で、同じ成分を一般的な英語名で示す場合と科学的な成分名で示す場合、成分表示の長さ、補足説明の有無を比べました。実験では、専門用語の少ない表示の方が、成分情報を読み取れたという自信や商品への評価が高くなる傾向が見られました。成分の働きを添えると自信と評価が高まる結果もありました。

一方、この研究では、架空の補足説明を付けた条件でも自信や商品評価が高まる結果がありました。「分かりやすく感じた」「良い商品だと思った」という反応は、正しい情報を理解した証拠とは限りません。もちろん、実務で根拠のない説明を付けてよいという意味ではありません。

また、Shulmanら(2020)は650人を対象に、科学技術に関する文章の専門用語が読み取りやすさや科学への関心、理解できたという自己評価に与える影響を調べました。専門用語に定義を付けた場合でも、読み取りにくさの影響が見られました。ただし、この研究も商品を買う顧客や販売実績を直接調べたものではありません。

「読みやすい」と「正しく理解した」は分けて確かめる

実際の理解度を測った研究もあります。McCormackら(2016)は、米国の消費者1,244人を無作為に分け、医薬品の安全性に関する従来の案内文と、平易な言葉や構成の変更を取り入れた改訂版を読んでもらいました。5問による理解度の正答率は従来版の52%に対して改訂版では63%で、分かりやすいと答えた人の割合も73%から82%に上がりました。一方、行動意図や信頼などには明確な差が見られませんでした。

この実験は医薬品の安全情報について、言葉だけでなく文の構成や見せ方も変えた比較です。商品説明を一語置き換えれば同じ効果が得られるという研究ではありません。それでも、印象の質問だけに頼らず、何を正しく理解したかを確かめる必要性を考える参考になります。

商品説明のどこが分かりにくいか、顧客に何を聞くか

説明文を修正する前に、顧客が判断したい内容を整理します。とくに、商品の特徴と顧客が実際にできることの間に抜けている説明がないかを見ます。

  • 機能の意味: 顧客はその用語を見て、何ができる商品だと思ったか。理解がずれていれば、用語の横に具体的な動作を示す必要があります。
  • 利用場面との関係: その機能が顧客のどの作業や困りごとに関係するか。必要な場面が想像できなければ、用途の例を添える候補になります。
  • 条件や限界: 対応する機器、利用人数、追加料金、設定の必要性などを正しく受け取っているか。ここを勘違いしている場合は、言葉を短くするだけでなく条件を明示することが必要です。
  • 比較に必要な情報: 類似商品と比べるとき、顧客は何が違うか説明できるか。名称が違うだけで差が分からないなら、同じ項目を並べて示す方が役立つ場合があります。

例えば「この説明は分かりやすいですか」と聞くだけでは、どこを理解したのか分かりません。代わりに「この機能を使って何ができると思いましたか」「使う前に準備が必要なことはありますか」「自分の仕事で使うならどの場面ですか」と、答えを誘導しない質問で確かめます。

「分かりません」という答えだけでなく、間違った使い方を想像していた場合も大切な手がかりです。専門用語が原因とは限らず、機能自体が複雑な場合、顧客の用途に合っていない場合、必要な仕様が説明されていない場合もあります。

難しい商品説明を、価値と条件が伝わる文章へ直すには

次は、CSVファイルへの一括出力と利用者別の権限設定ができると仮定した、架空の顧客管理サービスの例です。表の機能は説明のための仮の仕様であり、実在製品の機能や実績ではありません。

元の説明 顧客が判断しやすい説明の例 合わせて確かめる条件
CSV一括エクスポート対応 顧客一覧を、表計算ソフトなどで読み込めるCSV形式のファイルにまとめて書き出せます。 出力できる項目、件数、利用権限
ロール別アクセス制御 管理者と担当者など、利用する人の役割ごとに、表示や編集を許可する情報を設定できます。 設定できる役割と権限の範囲

専門用語を消す必要はありません。「CSV形式」は、他のシステムと連携したい顧客には重要な仕様です。正式な機能名を残し、その横に顧客ができることと、できる範囲を添えます。実際の製品では、機能や条件が本当に仕様と合っているかを必ず確認します。

文章を短くしても「誰でも簡単に使える」「作業時間が必ず半分になる」など、確認できない効果に置き換えてはいけません。価値を伝えることは、大きな成果を約束することではなく、利用条件に合うかを顧客自身が判断できるようにすることです。

説明を直したら、理解を確かめる小さな比較をする

次は研究を参考にした実務上の提案で、特定の商品説明について効果を検証した手順ではありません。

  1. 確認したい疑問を一つ決める。 例えば「初めて見る顧客が、CSV出力でできることと、出力対象の条件を正しく説明できるか」と決めます。
  2. 実際に想定する顧客に、説明文だけを見てもらう。 その分野に詳しい顧客と初めて使う顧客では知識が違うため、誰向けの説明かを記録します。社内担当者の反応だけでは代わりになりません。
  3. 答えを教える前に、具体的な質問をする。 「何ができますか」「何ができない、または未確認だと思いましたか」と聞き、正確な回答、分からない回答、誤解した回答を分けて記録します。
  4. 説明文を直し、同じ判断項目でもう一度確かめる。 変更前後で同じ仕様を示し、用語の説明や文章の順番を変えます。可能なら比較できる別々の顧客群に見てもらい、何が変わったかを調べます。
  5. 理解だけでなく、その先も見る。 問い合わせで繰り返される誤解、申し込み後の「想像と違った」という声、契約条件の確認不足なども調べます。購入数が変わっても、価格や集客経路など他の要因を分けずに文章だけの効果と断定しません。

もし用語の意味を取り違える人が多ければ、平易な説明を補います。できることは伝わっているのに利用条件の誤解が多ければ、対象範囲や追加費用を目立つ位置に明示します。内容を理解しても用途に合わないと答える人が多い場合は、説明だけでなく商品と顧客の適合そのものを見直します。

商品説明の目的は、難しい用語を使わないこと自体でも、読みやすいという感想を集めることでもありません。顧客がその商品について、何ができるか、何が必要か、自分に合うかを確かめられる状態にすることです。

参考文献・出典