商品を選んだ後の後悔を減らすには?購入前の比較を支える情報

マーケティング・集客
Psychology Laws 編集部

商品を購入した人から「別のモデルにすればよかった」「思っていた使い方ができなかった」と聞くと、ECサイトや商品案内を作る担当者は、どの情報を増やすべきか迷うかもしれません。購入後の後悔を完全になくすことはできませんが、購入前に用途との相性、選択肢ごとの長所と短所、費用、購入後に変更できる条件を比べられるようにすることは大切です。

単に商品の魅力や機能数を並べるのではなく、「この人が何を優先するならどの商品が合い、何を諦めることになるのか」が分かる情報を用意します。後悔の原因を心理だけで決めつけず、実際の品質、説明の正確さ、納品やサポートの問題も別に確認します。

商品を選んだ後、なぜ「別のものにすれば」と考えるのか

買った商品に不満があることと、「別の商品を選んでいれば、もっとよかった」と後悔することは、似ていても同じではありません。購入したものが期待どおりに使えなかった場合、実際には選ばなかった商品の方が優れていたか確かめられなくても、「あちらを選ぶべきだった」と想像することがあります。

TsirosとMittal(2000)は、消費者の意思決定における後悔を4つの研究で調べました。その結果、後悔は満足度と区別され、選ばなかった選択肢の方がよかったという情報がなくても生じることが示されました。また、現実とは別の展開を想像することが後悔に関わり、選んだ結果が悪く、従来の選択を変えた場合には、そうした想像が起きやすいと報告されています。つまり、すべての比較情報を提供すれば後悔が消える、という単純な話ではありません。

候補が多く、違いが大きいときの後悔

SagiとFriedland(2007)は、選択後の後悔について4つの実験を行いました。選んだ結果が不満足な場面では、候補の数が多く、候補同士の違いも多様であるほど、後悔が強まるという仮説を支持する結果でした。研究者らは、選ばなかった複数の候補が持つ「よい部分」を頭の中で集め、実際に選んだ一つの商品と比べてしまう可能性を論じています。

ただし、これは「販売商品を少なくすれば、すべての購入者の後悔が減る」と証明したものではありません。選んだ結果が不満足だったことが重要な条件であり、どの商品が実際の用途に合うかも別の問題です。

購入前に希望が整理されているかでも、選び方が変わる

Chernev(2003)は、商品を選ぶ前に理想の属性やその優先順位を考えてもらうことが、候補数と選択への確信の関係をどう変えるか、4つの実験で調べました。例えば一つの実験では、大学生88人が、4種類または16種類のチョコレートから選びました。事前に理想の特徴を整理しなかった人たちは、4種類の条件より16種類の条件で選んだものを変更しやすくなりました。一方、理想の特徴を整理した人たちでは、逆に4種類の方が選択を変更しやすい結果でした。

この実験が測ったのは、選んだチョコレートを別のものへ変更するかという行動であり、実際の商品を購入した後の後悔そのものではありません。ここから考えられるのは、候補数を一律に減らすより、購入者の希望がはっきりしているかを確かめることが重要だという点です。選択肢の数と判断の難しさの関係は、選択のパラドックスの解説でも扱っています。

購入前の比較情報で、何を確かめておくか

販売担当者が確認したいのは、購入者が選ぶための「情報の量」だけではありません。購入者の期待と、実際に得られる内容が食い違いそうな箇所を先に見つけることが重要です。

  1. どんな使い方を想定する商品か。 例えば「軽い」という特徴だけでなく、狭い部屋を短時間掃除する用途に向くのか、広い部屋を長時間掃除する用途に向くのかを説明します。用途が異なれば、重視する特徴も変わります。希望が決まっていない人には、使う場所や頻度から考えられる質問を用意します。
  2. どの長所と引き換えに、何を諦めるのか。 あるモデルは軽さで優れ、別のモデルは連続使用時間で優れるかもしれません。「Aの軽さとBの長い使用時間を両方備えた商品」が比較対象にないなら、それぞれの短所も同じ場所で見せます。選ばなかった商品の長所ばかりが後から目立つ状況を、説明の段階で点検するためです。
  3. 性能や効果の主張は、どんな条件で確認したか。 「長時間使用できる」「多くの人に選ばれている」などの表現は、対象のモデル、測定条件、集計期間を確認します。消費者庁の表示に関するQ&Aでは、商品・サービスの効果や性能を裏付ける資料は客観的に実証され、表示内容と適切に対応している必要があると説明されています。裏付けがない優位性を購入前の判断材料として示しません。
  4. 価格以外の負担と、選択を変えられる条件は何か。 送料、付属品、消耗品、保証、返品・交換の可否と期限、定期購入なら支払い回数や解約条件などを確認します。消費者庁の通販に関する案内は、ネット通販の最終確認画面で取引の基本事項を明確に表示する必要があることを示しています。購入後に初めて分かる費用や条件を残さないようにします。

購入前に条件を知れば、選択しない人が出ることもあります。それは説明が失敗したということではありません。合わない使い方や契約条件を購入前に判断できることも、比較情報の役割です。

比較表と購入前の案内を、どう作ればよいか

以下は、実在する商品や販売実績ではない説明用の仮の例です。ECサイトで、特徴の異なる2種類のコードレス掃除機を扱っているとします。モデルAは軽い代わりに連続使用時間が短く、モデルBは重い代わりに長く使えるという設定です。

比較する点 モデルA(仮) モデルB(仮)
主に向く使い方 狭い場所を短時間で掃除する 複数の部屋をまとめて掃除する
重視できる特徴 持ち運びの軽さ 連続使用時間の長さ
購入前に知っておく弱点 長時間の連続使用には向きにくい 持ち上げて使うと重さが気になる場合がある
実際の商品で確認する数値・条件 重量、運転時間、充電条件 重量、運転時間、収納寸法

この表は「AよりBが上」という順位を付けるものではありません。例えば購入者が「毎日階段も掃除するので軽さを優先したい」と考える場合と、「一度の充電で広い範囲を掃除したい」と考える場合では、比べる順番が変わります。

ここからは心理学の研究と公的資料を参考にした実務上の提案です。以下の表示によって購入後の後悔が必ず減ると、研究で直接確認されたものではありません。

  1. 購入者の用途を先に整理できるようにする。 「短時間・軽さを優先しますか。それとも一度に長く使うことを優先しますか」のように、優劣が分かれる項目を質問します。用途が決まっていない人が、その場で考える手がかりになります。
  2. 両商品を同じ項目と単位で比較する。 実際の商品ページには重量、使用時間、充電条件などの確認済みの数値を並べ、測定条件も示します。都合のよい数値だけ違う条件で並べないようにします。
  3. 選んだときに残る不便さも伝える。 Aを選ぶなら「長時間の連続使用には不向き」、Bを選ぶなら「重さに注意」と明記します。利用者が許容できない欠点なら、購入を見送る、ほかの商品を検討するといった選択もできます。
  4. 注文前に費用と返品・保証条件をまとめて確認できるようにする。 比較表から条件の説明へ移動できるようにし、注文確定前にも必要な契約情報を見せます。返品できるかどうかを曖昧な「安心サポート」という言葉だけで伝えません。
  5. 購入後の「思っていたのと違う」を情報改善につなげる。 問い合わせや返品理由で「性能の説明を誤解した」「サイズを確認できなかった」などが繰り返されるかを見ます。実際の品質不良や配送の問題は表示の問題と分け、説明の欠落があれば直します。後悔した理由を本人に聞かず、心理的な偏りと決めつけないことが大切です。

購入前の説明で目指すのは、どの商品を選んでも必ず満足すると約束することではありません。購入者が大切にする条件と商品の特徴・限界を照らし合わせ、「何を選び、何を選ばなかったのか」を納得できる材料をそろえることです。

参考文献・出典