極端に高いプランを置けば売れる?料金表を顧客目線で点検する

マーケティング・集客
Psychology Laws 編集部

料金表に極端に高いプランを追加すれば、今あるプランが売れやすくなるのでしょうか。比較する選択肢が増えることで、中くらいのプランが選ばれやすくなる場合はあります。しかし、高額プランを置くだけで契約数や売上が増えるとは限りません。

料金表を見直す際は、高額プランを必要とする顧客がいるか、価格差に見合う内容を提供できるか、追加後に契約率や採算がどう変わるかを分けて確かめることが大切です。

高額プランの追加で、既存プランの見え方はどう変わるか

例えば、ある業務サービスに月額3,000円の基本プランと、月額7,000円の標準プランがあるとします。そこへ、専任サポートなどを備えた月額18,000円の上位プランを加えると、これまで最も高かった標準プランは3つの選択肢の中間に位置します。金額やサービス内容は仕組みを説明するための仮の設定で、実際の料金相場や販売成果ではありません。

人は商品の価値を単独で判断するだけでなく、並んだ候補との比較によって評価を変えることがあります。Simonson(1989)の消費者選択研究では、商品が候補群の中で中間に位置するようになると、その商品が選ばれる割合が増える傾向が報告されました。自分の選択を他者に説明することを想定した参加者では、この傾向が強く見られました。

このように中間の案が選ばれやすくなる現象は妥協効果と呼ばれます。ただし、研究で扱った商品選択と、継続料金や業務上の利用条件を伴うサービス契約は同じではありません。「高い比較対象を置けば必ず標準プランが売れる」という意味ではないのです。

なぜ「高額プランを置けば売れる」と言い切れないのか

選ぶだけの実験と、実際にお金を払う選択とでは結果が変わる場合があります。Müllerら(2010)は、経験のある消費者が実在のブランドから選び、購入することにもなる実験条件と、仮に選ぶ条件を比べました。中間の商品が選ばれやすくなる傾向は購入を伴う条件でも見られましたが、効果の大きさは仮の選択より小さくなりました。

また、Müllerら(2012)の研究では、実際の購入を想定した条件を取り入れた実験で、中間案を選ぶ傾向は品質を重視する消費者に強く表れました。一方、価格を重視する消費者では効果が弱く、統計的に明確な結果は得られませんでした。Neumannら(2016)が142件の実験結果を統合した分析でも、中間案が好まれる傾向は見られるものの、選択肢の特徴や実験の比較方法によって効果の大きさに違いがありました。

これらは料金表の改善に参考となる研究ですが、自社サービスの売上増加を直接示したものではありません。特に、顧客が月々の支出を厳しく見ているなら、標準プランを「真ん中」にするだけでは判断が変わらない可能性があります。

高額プランを追加する前に、何を確かめるか

その価格で買いたい顧客と、提供する価値があるか

既存顧客の問い合わせや商談記録から、標準プランでは足りない要望が実際にあるかを調べます。例えば「導入を個別に支援してほしい」「緊急時の相談窓口が必要」といった要望が繰り返し出ているなら、上位プランとして提供する余地があるかもしれません。反対に、利用する人も提供内容も想定できない高額プランは、比較のためだけの選択肢になってしまいます。

同時に、専任担当者の人件費、対応時間、追加機能の維持費などを見積もり、その料金で継続して提供できるかを確認します。高い値札を付けることと、高い価値を提供できることは別です。

既存プランとの違いを、顧客が納得して理解できるか

上位プランに何を追加し、どのような利用者に必要なのかを説明できるか点検します。追加の価値が曖昧なまま「プレミアム」と名付けても、顧客が妥当性を判断する材料にはなりません。

標準プランも、上位プランと比べて安いという理由だけで勧めないようにします。顧客の必須条件に合うことが先で、価格帯の位置は判断材料の一つにすぎません。顧客ごとの人数・利用量・必要機能の確かめ方は、既存記事「料金プランで真ん中を選びたくなるのはなぜ?必要な機能を比べる」で詳しく扱っています。

上位プランの追加以外に改善できる点はないか

問い合わせを読むと、顧客が迷う理由は高額の比較対象がないことではなく、料金に含まれる範囲や追加費用が分かりにくいことかもしれません。その場合は、新しいプランを増やす前に、料金表示や契約条件の説明を直す方が適切です。変更の目的を「標準プランの選択割合を上げること」と決めつけず、解消したい顧客の困りごとから整理します。

高額プランを追加した後、何を見て判断するか

導入を試すなら、まず「上位プランを追加すると、訪問者全体の契約率や採算が改善するか」という確認したい問いを決めます。可能であれば、同じ時期に比較可能な顧客へ従来の料金表と追加後の料金表を分けて提示し、違いを調べます。広告内容や価格まで同時に変えると、どの変更が関係したのか分かりにくくなります。

見るべきものは、標準プランが契約全体に占める割合だけではありません。訪問者数に対する契約件数、プランごとの契約件数、売上、上位プランの提供費用、問い合わせや解約の状況も一緒に確認します。

次の表は、選択割合だけを見る危うさを示す仮の計算例です。実際の試験結果ではありません。

指標 追加前(2プラン) 追加後(3プラン)
料金表の訪問者 100人 100人
全プランの契約件数 12件 8件
標準プランの契約件数 6件 5件
契約全体に占める標準プランの割合 50% 62.5%

この例では標準プランの割合が50%から62.5%に上がっても、その契約件数は6件から5件に減り、契約総数も減っています。「真ん中が選ばれる割合が増えた」だけで販売が改善したとは言えません。ただし、100人ずつの数字だけで追加が悪影響を与えたとも断定できません。偶然の変動や訪問者の違いも考え、十分な記録を集めて判断する必要があります。

比較テストが難しい場合も、変更前後の数字を並べる際には集客経路、顧客層、季節性、価格改定などの違いを記録します。上位プランの提供費用が想定以上にかかる場合や、選びにくいという問い合わせが増える場合は、見直しや撤回も検討できます。

高額プランは、実際にその価値を必要とする顧客がいるときに設ける選択肢です。中間プランを目立たせるためだけに増やすのではなく、顧客が条件を比べて納得できる料金表になっているかを確かめ、その後の実績で継続を判断します。

参考文献・出典