改革続きで社員が疲れている|変更の優先順位と支援を考える

採用・評価・人材育成
Psychology Laws 編集部

受注管理システムの入れ替え、会議資料の書式変更、担当部署の見直し。どれも必要な改革として始めたのに、社員から「また変わるのですか」「覚えたころに次の変更が来る」と言われていないでしょうか。個々の改革には理由があっても、現場では通常業務に研修や旧手順との照合が重なっているかもしれません。

改革続きで疲れている社員に、意欲や適応力だけを求めないことが大切です。まず、複数の変更が同じ社員の仕事へどう重なっているか、変更の目的や期限、使える支援を確かめます。そのうえで、急いで対応しなければならない変更と、時期や範囲を見直せる変更を分け、学ぶ時間や通常業務の負担も含めて優先順位を決めます。改革をすべて止めることでも、説明して我慢してもらうことでもありません。

改革が続くと、社員の負担や受け止め方はどう変わるのか

一つの変更にも、新しい操作を覚え、仕事の手順を確認し、関係者に伝える作業が伴います。変更が重なると、それぞれの目的には賛成していても、対応するための時間や注意が足りなくなることがあります。そこで「変化を嫌う社員が多い」と考えてしまうと、実際の業務負担を見落とすかもしれません。

組織の変更が続き、適応することに疲れている状態は「変化への疲労(チェンジ・ファティーグ)」と呼ばれます。Coxら(2022)は、変化の頻度と疲労、仕事への態度や成果の関係を二つの横断調査で検討しました。一つ目の調査では、変更の頻度が高い組織の参加者ほど変化への疲労を報告し、その疲労は負担感、燃え尽き、離職意向、仕事への関わりの低さと関連しました。二つ目の調査では、仕事への満足や組織への愛着の低さを介して、疲労とチームワーク・離職意向・業績との間に間接的な関連が見られました。

ただし二つの調査は、同じ時点で情報を集めたものです。「改革が増えたから疲労が生じた」「改革を減らせば業績が回復する」と、原因や改善策の効果まで実験で証明したものではありません。それでも、改革の進行状況だけでなく、現場で生じている負担を調べる理由になります。

実際の変更件数だけでなく、社員自身がどう感じるかも関わります。RaffertyとJimmieson(2017)は、さまざまな業種の社員260人へ、4か月の間隔を置いて2度の調査を行いました。変更の大きさや頻度をどのように受け止めているかは、変更への否定的な感情を介して、不眠や心理的な健康状態と間接的に関連していました。一方、変更が頻繁だと感じることと実際の反対行動の関係は、最初の調査と4か月後とで方向が異なりました。

つまり、変更が多ければ必ず反対行動が増えると一般化できません。社員から反対が出なくなった場合も、負担が解消したとは限りません。この調査も、変更を減らす介入の成果を測ったものではありません。

改革の理由の受け止め方にも差があります。OuedraogoとOuakouak(2021)は、さまざまな組織の参加者320人について、改革の理由づけ、変化への疲労、改革に冷めた見方をすること、改革の成功の関係を調べました。変更によって得られる結果を理由にする見方は、疲労や冷めた見方の低さと関連し、「変更するのが適切・当然だ」という理由づけは、疲労の高さと関連しました。また、疲労と改革の成功との直接的な関連は確認されず、冷めた見方を介した間接的な関連が報告されました。

これは回答データに基づく分析です。「改革の利点を説明すれば疲れがなくなる」と断定できません。必要性を伝えるのと同時に、対応に使える時間や支援が本当にあるかを確かめる必要があります。

変更によって自分の仕事の進め方を選べなくなったと感じる場合は、自由を制限されたときの反発に関わる心理的リアクタンスという見方も参考になります。しかし、社員の異論をすべて心理的な反発や疲労と決めつけず、変更自体に現実の問題がないかも確認します。

変更の優先順位を決める前に、何を確かめるか

改革の担当部署ごとに計画を見るだけでは、同じ社員へ複数の仕事が重なっていることに気づきにくい場合があります。社員の実際の作業と、延期できるかどうかを同じ表で整理します。

確認する点 実際に確かめること 優先順位と支援へのつながり
変更の必要性と期限 安全、法令、情報保護、契約、顧客への影響と期限の根拠 先延ばしにできない対策を見極め、期限を調整できるものは後へ回せるか考える
変更が重なる人と仕事 担当者ごとに、新作業、研修、承認、通常業務が何件・いつ重なるか 実施時期をずらすか、対応する人手を増やす判断材料にする
変更前後の二重作業 旧システムと新システムへの入力、旧報告と新報告、照合作業が残るか 移行期間の負担と、古い作業を終了できる条件を明確にする
社員への影響の伝わり方 何がいつ変わるか、変えない仕事は何か、理由と手順が伝わっているか 説明不足なら具体的に伝え、現場の意見を計画へ反映できる部分を確認する
練習・相談・代行の支援 新しい手順を試す時間、マニュアル、質問先、応援担当者を用意できているか 変更を追加するだけにせず、通常業務の再配分や代行者を検討する
既に見える負担 未処理、手戻り、残業、困りごとの相談などに変化があるか 改革の進捗に加え、仕事が回らなくなっていないかを確かめる

例えば「新システムを使う人が増えた」という報告だけでは、負担が減ったとは言えません。以前のシステムにも同じ情報を入力しているなら、移行が進むほど二重作業が続く可能性があります。必要な移行期間だとしても、誰がその作業を担当し、いつ終わるのかを決めておくことが必要です。

また、情報漏えいや安全上の危険に対処する変更を、疲れているからという理由だけで無期限に先延ばしすることはできません。必要な対応を先に進めつつ、同時期に重なる任意の変更を減らせないか、担当業務の配分を調整できないかを考えます。

英国の安全衛生当局HSEは、組織の変更に関する公式指針で、変更理由の早めの説明、社員との相談、仕事への影響や日程の共有、必要な研修と支援を挙げています。加えて、対策の計画に関する指針では、ほかの改革との重なりを計画に含め、対策する範囲を絞る場合には理由を社員へ伝えるよう勧めています。これは英国での職場のストレス対策指針で、同時進行の改革を何件に制限するのが最適かを示した研究結果ではありません。

重なる改革を整理し、必要な支援を用意するには

以下は説明用の仮の例です。ある部署で、①顧客情報のアクセス権の見直し、②受注管理システムの入れ替え、③毎週の会議資料の書式変更を同じ時期に進めようとしています。社員は顧客対応をしながら、操作の研修や新旧の資料の確認にも時間を使っています。

調査の結果、①は情報保護上の問題を解消するため対応期限が決まっており、②は旧版を一定期間安全に利用でき、③はすぐ変更しなくても会議に必要な情報を共有できるという条件だったとします。これらは優先順位を考えるための仮の条件であり、実際の会社の情報管理やシステム利用を示すものではありません。

改革案(仮) 確認した条件 優先順位と支援の例
顧客情報のアクセス権を見直す 情報保護上の問題と対応期限が確認できている 必要な対策を優先し、変更後の権限申請と相談先を用意する
受注管理システムを入れ替える 旧版の安全な利用を続けられる期間があり、操作の研修が必要 実施時期を調整し、研修時間と二重入力を終える条件を先に決める
会議資料の書式を変更する 差し迫った期限がなく、現行の資料でも仕事に必要な情報を伝えられる 一時的に延期し、再検討時期と判断した理由を知らせる

これは固定された正解ではありません。旧システムに重大な問題が見つかれば、入れ替えの必要性は変わります。書式変更が法令で必要な場合も、安易に延期はできません。判断の分かれ目は、変更の名称ではなく実際の期限・影響・準備状況です。

次の進め方は、研究とHSEの指針を参考に組み立てた実務上の提案です。この五つの手順そのものによって社員の疲労が減ると、実験で確認されたわけではありません。

  1. 同時に進む変更を、社員ごとの作業まで並べる。改革の担当部署だけでなく、新しい操作を学ぶ人、旧手順も続ける人、承認を担う人を確かめます。各変更がいつ重なるか、担当者の予定と照合します。
  2. 先延ばしできない条件を先に確かめる。情報保護や安全、契約などの必須対応と期限の根拠を確認します。それ以外の変更は、延期による不利益と社員の負担を比較して順序を決めます。
  3. 重なりを減らし、古い作業をいつ終えるか決める。任意の書式変更を後へ回す、段階的に移行するなどを検討します。新しい手順の導入だけでなく、旧報告や二重入力の終了条件、延期した案の見直し時期も記録します。
  4. 変更の理由と、実際の支援を社員へ伝えて相談する。何を先に進めるか、何を延期するか、仕事がどう変わるかを説明します。操作を学ぶ時間、研修中の代行者、困ったときの相談先を確保し、現場にしか分からない二重作業や問題も聞き取ります。
  5. 導入後は仕事の状態を再確認する。改革の完了率だけでなく、未処理の仕事、手戻り、残業、社員の声を確かめます。改善が見られなければ、説明不足の可能性だけに絞らず、人員配置や実施時期、旧作業の廃止状況も見直します。

社員には、例えば次のように説明できます。

「三つの変更が重なっていることを確認しました。顧客情報のアクセス権は、期限のある問題への対策として先に進める必要があります。一方、会議資料の書式は後に回せるか調整します。受注管理システムは、研修時間と旧作業の終了条件を決めてから進めます。今の業務で二重になっていることや、足りない支援があれば教えてください」

このように伝えても、実際の仕事量が変わらなければ疲れは残るかもしれません。必要な変更を同時に進めるなら、その期間に別の仕事を減らす、応援要員を置く、相談先を用意するなどの支援も検討します。異論が出たときも「変化が嫌いなのだ」と決めつけず、具体的な不都合がないかを確かめます。

改革が必要なことと、すべての改革を同時に行うことは別です。変更が重なる範囲を見えるようにし、先に進める必要性と延期の影響を比べ、社員が実行できるだけの時間と支援を確保する。そうした判断を続けることが、改革と現場の負担を両方見直す出発点になります。

参考文献・出典