面接官の「なんとなく合う」をどう扱う?根拠を確認する評価会議

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採用の評価会議で「この人は、なんとなくうちのチームに合いそうです」と意見が出ることがあります。反対に、別の面接官は「受け答えはよかったけれど、仕事ができるかは分からない」と感じているかもしれません。相性の感覚をそのまま採用理由にしてよいのか、かといって面接官の印象をすべて無視すべきなのか、迷う場面です。

「なんとなく合う」という印象は、結論ではなく、何を評価したのか確かめるための手がかりとして扱います。評価会議では「誰と気が合うか」ではなく「今回の職務のどの条件に合うと考えたのか」を尋ね、候補者が実際に話した経験・行動と事前の評価基準を照合します。根拠を説明できない部分は未確認として残し、印象だけで加点も減点もしないことが大切です。

「なんとなく合う」という印象は、何に影響されるのか

候補者と話が弾むと、「一緒に仕事がしやすそう」と感じることがあります。採用の場では自然な反応ですが、会話しやすかったことと、応募職種で必要な調整や判断を実行できることは、同じではありません。

ただし、第一印象を「職務とは無関係な思い込み」と一律に片付けるのも正確ではありません。Swider、Barrick、Harris(2016)は、163件の模擬面接を分析し、冒頭の雑談などで形成された印象が、その後の共通質問への評価とどう関係するかを調べました。最初の印象が後の評価に関わる部分には、職務に関連する回答内容と重なるものも相当含まれていました。また、その印象は面接の後半より前半の回答評価と強く関連しました。

この研究は模擬面接での関係を分析したもので、印象に従って採用すれば仕事の成果を予測できると証明したものではありません。印象の中に職務に関係する情報があるかもしれない一方、何が根拠になったかを確かめなければ、採用判断には使いにくいということです。

Barrickら(2012)は、模擬面接の候補者130人の評定を分析しました。冒頭に形成された印象は、その後の構造化された質問への回答評価と強く関連しました。候補者の職務上の資格を考慮しても、外向的な傾向や言葉で伝える技能と初期印象に関連がありました。こうした特徴が職務にどの程度必要かは、仕事によって違います。

つまり、話し方の印象が残ったとしても、それを「どの仕事にも向いている」という総合評価に広げない方がよいでしょう。面接官の好意的な印象が別の能力の点数にまで広がる可能性は、ハロー効果の解説でも扱っています。ただし、好印象があるというだけでハロー効果が起きたと断定できません。職務に必要な説明力を実際に示していた可能性も残ります。

初期の印象をさらに分けて調べたBarrick、Swider、Stewart(2010)の研究では、構造化面接の初期段階で候補者の能力が高いと評価されたことが、その後の面接評価や実際のインターン採用の申し出と関連しました。一方、単なる好意や面接官との似ている感覚は、別の面接官による判断とは統計的に明確な関連を示しませんでした。これは特定のインターン採用場面での結果であり、面接官の直感すべてを「能力の予測」として正当化するものではありません。

面接全体の設計も関係します。Campion、Palmer、Campion(1997)は選考面接の研究をレビューし、質問内容や回答の評価方法を整えるための15の要素を整理しました。事前に職務に基づく質問・採点方法を準備することは、面接をより安定して比較できるようにする方法とされています。ただし、このレビューは今回示す評価会議の進行手順そのものを実験したものではありません。

「なんとなく合う」には、会話の親しみやすさも、仕事で求める技能を見た感覚も混ざり得ます。評価会議で確認したいのは、面接官が好印象だったかどうかを争うことではなく、その感覚が職務に必要な何の情報を指しているのかです。

評価会議で「合う」を根拠に変える前に、何を確かめるか

評価会議で最初に確かめたいのは、面接官が使った「合う」という言葉の意味です。同じ言葉でも、全員が同じものを評価しているとは限りません。次のように分けて聞くと、根拠として扱える点と、まだ判断できない点を見つけやすくなります。

会議で出た言葉 具体的に確かめること 評価での扱い
「話しやすくて合う」 雑談が盛り上がったのか、職務に必要な説明や聞き取りの行動が見られたのか 親しみやすさだけでは採点しない。仕事上の会話能力を評価するなら、その回答や行動を確かめる
「チームに合いそう」 どんなチーム業務に必要な、どの行動を指すのか。情報共有、役割調整、期限への対応などの根拠はあるか 事前に定めた職務要件に対応する部分だけを確認し、既存社員と似ていることを条件にしない
「考え方が合う」 仕事上の判断や安全・品質への対応の話なのか、面接官の個人的な好みなのか 具体的な職務上の判断なら基準と照合し、私的な価値観の一致は選考の根拠にしない
「すぐ活躍できそう」 応募職種に関係する経験、担当した仕事、判断の理由や実績は具体的に示されたか 確認できた職務能力と、不明な技能を分けて記録する
「少し合わない気がする」 どの職務基準を満たしていないのか。単に話し方や経歴が面接官と違うだけではないか 根拠のない減点は避ける。ただし重要な必須能力が確認できなければ未確認として扱う

「なんとなく合う」と言われたとき、会議の司会役は「今回の職務の、どの評価項目に関係しますか」「その印象を持ったのは、候補者のどの回答でしたか」と尋ねられます。明確に答えられなければ、候補者が低い能力だと決まるのではなく、その印象を採点の根拠として使えない、または材料が足りないという状態です。

反対に、候補者が仕事上の難しい判断や他部署との調整を具体的に説明していれば、その回答を職務の基準と比べて評価できます。ただし、面接での自己申告だけでは実際の成果のすべてが確認できるわけではありません。必要な項目について情報が足りなければ、全候補者に公平な条件で追加質問や職務に近い課題を設けられるか検討します。

厚生労働省の公正な採用選考の基本は、職務を遂行するための適性・能力を採用の基準とし、本籍地や家族の職業、思想・信条など職務に関係しない事項を把握しないよう求めています。面接官が「合いそうな人」を探そうとして、私生活や本人の能力と無関係な特徴を質問・採点することは避けます。

「なんとなく合う」が出た評価会議をどう進めるか

以下は説明用の仮の例です。顧客対応と関係部署との調整を担当する職種の面接後、3人の面接官が評価会議に集まりました。A面接官は候補者について「雰囲気がよく、うちに合いそう」と発言しました。B面接官は「顧客からの急な依頼にどう対応したかは話していたが、社内調整の範囲が曖昧だった」と記録しています。C面接官は「必要な部署に状況を知らせ、代案を準備したと説明していた」とメモしています。

この時点では「合う」と言ったA面接官を間違いと決めたり、B面接官の慎重な評価を正しいと決めたりはできません。今回の職務に必要なのが「顧客の要望の変化を確認し、影響を整理して関係者に共有すること」なら、各面接官が同じ回答のどの部分を見ていたかを確かめます。

確認する欄 この候補者についての仮の記録 会議での扱い
印象 「話しやすい」「チームに合いそう」 それだけでは職務能力の得点にしない
回答から分かること 顧客の要望変更を受け、関係部署に連絡し、代案を準備したと本人が説明した 職務上の情報共有・代案検討に関する回答として評価基準に照らす
まだ分からないこと 本人が社内調整のどこまでを担当したか。期限や権限をどう確認したか 必須の評価項目なら追加確認の必要性を検討する
評価会議での判断 事前に定めた各項目の点数と回答根拠を面接官ごとに照合する 「合う」という多数意見ではなく、項目別の職務証拠から判断する

会議の進め方として、次の順番が考えられます。これは面接研究と公的な選考指針を参考に考えた実務上の提案で、この五つの手順が採用後の成果や評価の偏りを必ず改善すると直接検証された方法ではありません。

  1. 面接前に決めた評価項目を確認する。「協調性のある人」などの曖昧な表現を、担当職務で必要な情報共有や関係者との調整など、観察できる行動に結び付けます。候補者の顔ぶれを見てから、選考基準を都合よく変えないようにします。
  2. 話し合う前に、各面接官の記録と暫定評価をそろえる。誰が何を聞き、候補者がどう答えたか、どの項目に何点を付けたかを独立して記入します。先に役職の高い面接官の全体印象を聞いて、ほかの人の記録を変えてしまわないようにします。
  3. 「合う」の中身を、職務上の事実か印象かに分ける。司会役は「どの項目に合うと考えましたか」「候補者が示した行動は何でしたか」と聞きます。業務上の具体例は基準と照合し、単に話が弾んだ、面接官の好みと一致したという部分は採点根拠にしません。
  4. 意見が割れた評価項目と、不足している情報を確かめる。各面接官が同じ回答をどう読んだのか、別の回答を見ていたのかを整理します。「どちらが強く推すか」で結論を出さず、重要な能力が未確認なら、同じ条件で追加確認できる方法がないかを検討します。確認できない事実を好印象や不信感で補いません。
  5. 結論と根拠、未確認点を制度に沿って記録する。採用可否は事前の必須条件・評価項目・決定権限に従い、どの回答を根拠として判断したかを残します。候補者の私的な特徴や関係のない印象を評価メモに積み重ねず、個人情報は所定の範囲で管理します。

英国の人事専門団体CIPDは、選考方法の公式資料で、共通の質問と採点基準の使用、面接官ごとの独立した記録と採点、全員が記入した後の話し合いを勧めています。先に議論すると、ほかの面接官、特に立場の強い人の意見に左右される可能性があるためです。また、必要に応じて面接以外の職務に関係する情報を使うことも勧めています。これは選考一般の指針であり、今回の「なんとなく合う」への問い返しの順番を実験で確認したものではありません。

会議では、例えば次のように進行できます。

面接官A:「なんとなくチームに合いそうでした」

司会役:「その印象は、今回の職務のどの項目に関係しますか。回答から確認できた行動はありますか」

面接官A:「話しやすかったのが大きいです。仕事に関する回答は改めて確認します」

面接官B:「顧客の依頼への対応は説明していましたが、本人がどこまで社内調整したかが分かりません」

司会役:「では、情報共有の項目は回答で確かめられる部分と未確認の部分を分けましょう。合否に必要な点なら、全候補者に公平な方法で追加確認できるか考えます」

印象を無理に否定するより、職務と関係する行動を示す情報があるか、まだ確かめていないことは何かを話し合う方が、採用理由を明確にできます。複数の面接官が同じ印象を持っていても、それだけで職務上の能力が証明されるわけではありません。一方、必要な能力を示す回答がそろっていれば、全員が同じ好みを持つ必要もありません。

参考文献・出典