提案するプランの順番はどう決める?顧客が比較しやすい説明の組み立て方

営業・交渉
Psychology Laws 編集部

商談でライト・標準・高機能の3プランを提案するとき、「安い順に説明するか、高い順に説明するか」で迷うことがあります。最初に紹介するプランで顧客の印象が変わるかもしれませんが、順番だけで最適なプランを決めることはできません。

顧客が比較しやすい説明にするには、まず何を重視しているかを確かめ、候補を一度まとめて見せたうえで、その条件に合うプランから説明し、ほかのプランとの違いを同じ項目で確認します。必要条件がまだ分からない場合は、特定のプランを最初から「おすすめ」とせず、違いを概観してから質問します。

この記事では、提示する順番や情報の並べ方が選択に関わる研究を確認し、対面やオンラインの商談で使える説明の組み立て方を考えます。

プランを説明する順番は、なぜ顧客の判断に関わるのか

先に聞いたプランが、比較の出発点になることがある

説明用の仮の場面です。営業担当者が月額6万円・9万円・13万円の3プランを提案するとします。最初に13万円の高機能プランを長く説明し、その後に9万円のプランを見せれば、顧客には9万円が手頃に感じられるかもしれません。しかし、顧客に必要な機能が6万円のプランで満たせるなら、その比較の仕方だけで購入を決めるのは適切ではありません。

逆に、安いプランから順番に説明するだけでも、最初の候補に目が向き、後に出てくる必要な機能を見落とす可能性があります。これはあくまで考えられる反応であり、すべての顧客に起こるとは限りません。

順番の実験では、最初が有利な場合も最後が有利な場合もあった

Mantonakisら(2009)は、参加者に同じワインを分けた2~5サンプルを順番に試飲してもらい、最後に最も好むサンプルを選んでもらう実験を行いました。参加者には各サンプルが同じワインであることを知らせていませんでした。全体として最初に試飲したサンプルが選ばれやすい傾向が見られました。一方、ワインについて知識のある参加者では、サンプル数が多い条件で最後のサンプルが選ばれやすい傾向も見られました。Mantonakisら(2009)の研究要旨

この研究は、ワインを順に試して一つ選ぶ実験であり、法人向けサービスの提案順を直接比較したものではありません。ただし、順番の影響は「必ず最初」「必ず最後」と一律には決められず、選ぶ人の知識や候補数にも関わり得ることを示しています。

同じ情報でも、比較のさせ方が違うと選択が変わった

Sandorfら(2018)は、フランスの大学生600人を対象に、学内の自動販売機で提供するコーヒーの付加サービスについて選択してもらいました。参加者を無作為に分け、選択肢を列に置いて特徴を行に並べる比較表と、選択肢を行に置いて特徴を列に並べる比較表を使いました。

その結果、表の向きによって示された選好は異なりました。一方、単純化した判断方法を使う傾向には、表の向きによる違いが確認されませんでした。Sandorfら(2018)の研究要旨

また、Pizziら(2014)は、商品を一つずつ見比べる場合と、価格や特徴などの項目ごとに見比べる場合を、机や航空券などの選択課題で比較しました。項目ごとに情報を得る条件ではデザインなどの魅力に関する特徴が、商品ごとに情報を得る条件では価格など実際の利用のしやすさに関する特徴が、選択により強く関わる傾向が報告されました。Pizziら(2014)の研究概要

これらも、商談で特定の説明順が最も分かりやすいと証明した研究ではありません。むしろ、順番と見せ方が顧客の注意を向ける先に関わり得るため、説明する側が比較条件を明確にする必要があると考えられます。

プランの順番を決める前に、何を確認するか

顧客が必ず満たしたい条件は何か

「価格を抑えたい」という希望だけでなく、利用人数、必要な機能、サポート時間、導入期限など、満たさなければ利用できない条件を聞きます。

たとえば「20人が使う」「操作の履歴を残す」「問い合わせ対応は平日日中でよい」という条件が確認できれば、人数の上限や履歴機能が不足するプランは、安くても今回の候補としては難しくなります。

まだ条件が決まっていなければ、どれか一つを強く勧めるより、プランの違いを短く説明し、どこが重要かを聞くほうが検討材料を得られます。

価格差を生む機能は、本当に必要か

高額プランほど多くの機能を含むことはありますが、機能が多いことと顧客に適していることは別です。追加料金で増えるものが、利用人数なのか、履歴保存なのか、夜間対応なのかを分け、顧客の業務に結び付けて説明します。

価格は月額なのか年額なのか、初期費用やオプション費用が含まれるのかもそろえます。価格だけ比較しやすくても、契約期間や対応範囲を見落とせば判断材料として不十分です。

顧客は各プランを一度に見たいのか、順に詳しく聞きたいのか

商談時間やプランの複雑さも確認します。違いが数項目なら一覧表で概観しやすい一方、運用方法まで大きく異なるなら、顧客が重視するプランの内容を先に説明したうえで、ほかとの違いを確認する方法が考えられます。

「まず全体を比べたいですか。それとも、条件に合う案を中心に詳しく説明しましょうか」と聞けば、説明順を営業側だけで決めずに済みます。

顧客が比較しやすい提案順をどう組み立てるか

ここからは、選択順や情報の見せ方に関する研究を参考にした実務上の提案です。以下の順番が、売上や顧客満足度を必ず高めると研究で検証されたわけではありません。

1. まず、確認できた条件を言葉にする

冒頭で「20人が利用し、操作履歴が必要で、平日日中のサポートでよい。月額予算は10万円まで」というように、顧客から確認した条件を整理して伝えます。

「これが今回の比較基準という理解でよいでしょうか」と確かめ、違いがあればここで直します。条件を確認できていないなら、紹介順を決め打ちしません。

2. 全プランを短く示し、適合する案から詳しく説明する

次は説明用の仮のプランです。金額は実際の市場価格ではありません。各案の条件が次のように異なるとします。

項目 ライト 標準 拡張
月額・税抜き 6万円 9万円 13万円
利用人数の上限 10人 30人 30人
操作履歴 なし あり あり
サポート 平日日中 平日日中 24時間

※表は違いを考えるための仮の例です。実際の商談では初期費用・契約期間・追加料金・解約条件なども確認して追記します。

先ほどの顧客条件なら、ライトは人数と履歴機能が不足します。拡張には夜間対応がありますが、今回の必要条件を超えており、予算の上限も超えます。標準は確認できた条件を満たすため、まず詳しく説明する候補になります。

この場合は「3案の概要を最初に示す → 標準が条件を満たす理由を説明する → ライトで不足する点と拡張で増える点を説明する」という順番が考えられます。真ん中のプランだから先に紹介するのではなく、今回の条件に合うから比較の起点にするのが違いです。

もし顧客が10人以下で履歴機能も不要ならライトが先になります。24時間対応が必須なら拡張を中心に説明しますが、予算を超える場合は、予算変更や代替案を含めて相談する必要があります。

3. ほかのプランとの違いを、同じ項目・同じ単位で示す

適合する案だけを詳しく説明して、ほかを省略すると、顧客は提案に含まれる選択肢を判断できません。価格、機能、利用人数、サポートなどをそろえて、どのプランで何が増え、何が使えなくなるかを伝えます。

説明の順番は、たとえば「人数と履歴 → サポート → 費用」のように顧客が重視する条件を先に置き、その順序を各プランで変えない方法が考えられます。価格だけを先に強調したい場合でも、必要な機能の不足を隠さないことが大切です。

また、中間プランは、上下の候補があるだけで魅力的に見える場合があります。詳しくは妥協効果と中間プランの選ばれ方で説明されていますが、今回の提案では「真ん中だから無難」という理由ではなく、顧客の必要条件で判断できるようにします。

4. 説明を終えたら、どの違いが判断に関わるか聞く

一通り説明した後で、「最初に紹介した標準プランにしましょう」と結論を急がず、「比較した結果、選ぶうえで気になる違いはありますか」と尋ねます。

「本当に24時間対応は不要か」「今後、利用人数が増えそうか」といった追加条件が見つかれば、最初の候補を見直します。比較していない費用や運用条件があれば、資料を追加してから判断してもらいます。

顧客から理由を確認できたなら、「標準案は20人利用と履歴保存を満たし、月額上限にも収まる。一方、24時間対応が必要になれば別案を再検討する」といった形で選択理由を整理できます。

プランの提示順は、最初や最後に置いた案を選んでもらうためではなく、顧客が必要条件と各案の違いを確認できる順番として決めることが大切です。

参考文献・出典