面接で話のうまさや専門用語だけで実力を判断していない?具体的な実績を確かめる質問
採用面接で、応募者が専門用語を交えて流ちょうに話すと、「この人は仕事ができそう」と感じることがあります。話す力や専門知識が仕事に必要な場合もありますが、うまく説明できることと、実際にその仕事を担い、成果を出したことは同じではありません。
面接では、「何を担当したのか」「どんな問題に、本人が何をしたのか」「どのような結果になり、その根拠は何か」を順に確認します。専門用語を使ったことも、言葉に詰まったことも、それだけで合否につなげず、今回の職務に必要な能力を示す事実を同じ基準で集めましょう。
話がうまい応募者を「実力がある」と感じるのはなぜか
以下は説明用の仮の場面です。ある会社が、顧客からの問い合わせ対応を改善する担当者を採用しようとしています。応募者Aは「業務指標を可視化し、改善の仕組みを最適化しました」と専門的に聞こえる言葉を並べ、途切れずに説明しました。応募者Bは少し考えながら「回答が遅れた案件を毎日確認し、担当が曖昧なものを振り分け直しました」と話しました。
Aの説明には知識や経験が反映されているかもしれませんが、どの仕組みを自分で改善したのかは、まだ分かりません。Bの説明は具体的に聞こえますが、実際にどんな成果があったのかは未確認です。話し方の印象も、具体的に聞こえることも、それだけでは能力の証明になりません。
話の内容が同じでも、伝え方で面接評価が変わった実験
McGovernとTinsley(1978)は、採用業務に関わる52人に、約16分間の模擬面接を録画した映像を評価してもらいました。話している言葉の内容は同じままで、応募者の視線、声の抑揚、活気、表情、話の滑らかさなどを組み合わせて変えています。
その結果、伝え方の条件によって、多くの評価項目と次の面接へ進めたいかという判断に差が見られました。ただし、実験では複数の話し方・非言語的な要素を一緒に変えています。「滑らかに話せることだけが原因で高く評価された」とは言えません。また、実際の仕事の成果を追跡した実験でもありません。
この研究が示すのは、面接官が同じ説明内容を聞いても、話し方の違いが評価に入り得るということです。話し方から抱いた全体的な印象が、別の能力の評価にまで広がる場合については、ハロー効果の解説も参考になります。
面接での自己アピールと、入社後の実績は区別する必要がある
Barrick、Shaffer、DeGrassi(2009)は、面接での見た目、自己アピールの方法、言葉や身振りによる表現が、面接官の評価とその後の仕事の成果の評価にどう関わるかを、複数の研究から統合して調べました。
分析では、面接で見られる自己表現と面接官の評価との関連は、そのまま入社後の仕事の成果を表すわけではなく、質問や採点方法があまり決められていない面接は、こうした自己表現の影響を特に受けやすいと報告されています。
これは複数の見せ方を含む研究の統合であり、「話がうまい応募者は実務能力が低い」と示した結果ではありません。仕事での説明力を評価する場合にも、それとは別に、案件を進める力や問題への対応を確かめる必要があります。
専門用語が難しいほど、必ず賢く見えるわけでもない
Oppenheimer(2006)は、文章に不必要に難しい語句を使うことが、書き手の知的能力の評価にどう影響するかを調べました。最初の3つの実験では、文章の言葉の複雑さを変えると、複雑な語句の多い文章ほど、書き手の知的能力が低く評価される傾向が見られました。読みやすさの違いがこの結果に関わっていました。
これは英語の文章を読んで評価する実験であり、採用面接で専門用語を話す場面や、専門知識そのものを測ったものではありません。「難しい言葉を使えば高評価になる」とも「専門用語を使えば低評価になる」とも言い切れません。面接では、専門用語を知っているかと、その言葉が指す仕事を実際に理解して行ったかを別々に確かめることが必要です。
応募者の話を聞く前に、どの能力を評価するか決める
最初に仕事内容を明確にします。問い合わせ対応の改善担当者であれば、専門用語を知っていることだけではなく、どんな問題を調べ、関係者と調整し、改善の結果を確認できるかが重要かもしれません。担当職務に応じて、例えば次の点を区別します。
- 問題を把握する力:回答が遅れる案件や誤案内を、どの記録から把握したか。原因として考えたことと、実際に確認した事実を分けられるか。
- 本人が仕事を進めた範囲:本人が自分で決めて実行した仕事、上司やチームが担当した仕事、他部署に依頼した仕事が区別できるか。
- 結果を確認する力:何を成果とし、いつからいつまで、どの対象を比べたか。件数や割合の数え方がそろっているか。
- 専門知識の使い方:使った用語の意味を、今回の業務上の手順や判断と結び付けて説明できるか。知識が必要な職務では、職務に関連した課題でも確認できるか。
- 伝える力:顧客に難しい内容を説明する役割なら、説明の正確さや相手の理解を確かめる方法が重要です。話す速さや声の大きさだけを、職務上の説明力と同一視しません。
米国人事管理局(OPM)の構造化面接の解説では、職務分析から重要な能力を決め、過去の行動や仕事に近い状況を尋ねる質問を、共通の評価基準とともに用意することを勧めています。こうした面接は、自由な面接に比べて評価者間の一致や仕事の成果との関連について良好な結果が見られると説明しています。ただし、実施方法によって違いがあり、質問をそろえるだけで評価の偏りがなくなるわけではありません。
専門用語や成功談から、本人の実績をどう聞き出すか
抽象的な成功談が出たときは、当時の課題 → 本人の役割 → 行ったこと → 結果と根拠の順に質問すると、確認できた事実と推測を分けやすくなります。以下は実務上の提案であり、この質問の順番自体の効果が実験で確認されたものではありません。
| 応募者の説明(仮の例) | 追加で聞く質問 | 評価に必要な材料 |
|---|---|---|
| 「業務指標を最適化しました」 | 「何の数字を、どんな理由で改善対象にしましたか」 | 課題の定義と選んだ指標、本人の理解 |
| 「改善を主導しました」 | 「あなたが決めたこと、実行したこと、ほかの人が担当したことを分けて教えてください」 | 本人の担当範囲、関係者との役割分担 |
| 「未回答件数を40%減らしました」 | 「何件から何件に変わり、対象の総件数と期間は同じでしたか」 | 数値の定義、比較条件、結果の確かさ |
| 「新しい仕組みを定着させました」 | 「実際に使われたかを何で確かめましたか。うまくいかなかった点はありますか」 | 実施結果、確認方法、残る課題 |
数字の確認がなぜ必要か、説明用の仮の計算で考えてみます。応募者が「期限までに回答できなかった件数を、ある月の40件から翌月24件に減らした」と話したとします。件数は確かに40%減少しています。しかし、問い合わせ全体が500件から300件に減っていたなら、期限内に回答できなかった割合は、40÷500も24÷300も8%です。率は変わっていません。
この件数と割合はすべて架空の数字で、実在する応募者の成果ではありません。また、全体の件数や割合が改善していたとしても、本人の施策によって改善したとすぐに断定はできません。顧客の種類、繁忙期、チームの変更など、結果に影響する条件も確かめる必要があります。
逆に、応募者が具体的な数字を覚えていないからといって、経験がないと断定することもできません。職務に必要な範囲で、報告書などの記録や、どんな手順で結果を確認したかを聞きます。機密情報や前職の顧客情報の開示を求めることは避け、話せる範囲の説明を評価します。
話のうまさと職務能力を分けて、合否判断につなげる
厚生労働省の公正な採用選考の具体的な方法では、面接の質問と評価基準を事前に定め、職務に必要な適性・能力に基づいて評価するよう求めています。実務では次のような進め方が考えられます。これは研究・公的資料を参考にした提案で、どの採用でも成果を保証する手順ではありません。
- 評価する仕事を先に決める。必要な知識、実際に担当する作業、対人説明などを分け、職務上何をできればよいかを明確にします。専門用語の理解や説明力が必須の場合は、その理由も示します。
- 応募者全員に共通の質問をする。過去の案件の課題、本人の担当、具体的な行動、結果を、同じ職務の応募者に共通して聞きます。追加質問の範囲も事前に定め、話が流ちょうな人だけ確認を省かないようにします。
- 回答の内容と面接官の印象を別々に記録する。「話が明快だった」という感想ではなく、「難しい案件の確認手順を説明し、本人の担当範囲が分かった」といった回答内容を残します。まだ確認できない項目は、推測で点数を埋めずに未確認とします。
- 必要なら職務に近い課題で確かめる。専門的な問題の整理や、顧客への説明が重要な役割なら、適切な事前説明と配慮のもと、同じ条件で短い実務課題を行う方法もあります。面接の話し方だけに頼らず、必要な技能を確かめるためです。
- 基準に沿って比較し、不足する根拠を確認する。専門用語に詳しい応募者でも実績の担当範囲が不明なら追加確認し、言葉が平易な応募者でも必要な仕事の行動が示されていれば評価に含めます。最終的には応募書類、面接、必要な選考結果を社内の基準に沿って判断します。
面接官同士の確認なら、例えば次のように話せます。これは説明用の仮の会話例です。
「Aさんは専門用語を使って流ちょうに説明していましたが、改善した業務のどこを本人が担当したかはまだ分かりません。Bさんは平易な説明でしたが、具体的な対応手順を話していました。二人とも、当時の問題、本人の行動、結果とその比較条件を同じ質問で確認し、仕事に必要な能力ごとに評価しませんか」
面接での話のうまさは、その人の一つの特徴ではあります。しかし、その特徴を仕事全体の実力に置き換える前に、何を自分で行い、どの条件でどんな成果が確認されたかを聞くことが大切です。専門用語が多いか少ないかよりも、今回の仕事に必要な能力を具体的に示せているかで判断しましょう。
参考文献・出典
- McGovern, T. V., & Tinsley, H. E. A.(1978)「Interviewer Evaluations of Interviewee Nonverbal Behavior」Journal of Vocational Behavior, 13(2), 163–171。52人の採用担当者が、説明内容をそろえ、視線・声・話の滑らかさなどを変えた模擬面接を評価した研究。出版社公開の要旨を確認。
- Barrick, M. R., Shaffer, J. A., & DeGrassi, S. W.(2009)「What You See May Not Be What You Get: Relationships Among Self-Presentation Tactics and Ratings of Interview and Job Performance」Journal of Applied Psychology, 94(6), 1394–1411。面接での自己表現、面接官の評価、その後の仕事の成果の関連についてのメタ分析。PubMedの原著要旨を確認。
- Oppenheimer, D. M.(2006)「Consequences of Erudite Vernacular Utilized Irrespective of Necessity: Problems with Using Long Words Needlessly」Applied Cognitive Psychology, 20(2), 139–156。文章の語彙を不必要に複雑にした場合の書き手の知的能力の評価を調べた実験。出版社掲載の要旨を確認。
- U.S. Office of Personnel Management(掲載年記載なし)「Structured Interviews」。職務分析に基づく質問・評価基準、構造化面接の妥当性と評価者間の一致についての米国政府の解説。公式本文を確認。
- 厚生労働省(掲載年記載なし)「採用選考の具体的な方法」。面接前の質問・評価基準の設定と、職務に必要な適性・能力に基づく公正な評価。公式本文を確認。