繰り返し見る情報を信用していない?広告や口コミの根拠を確かめる
集客用のサービスを選ぶとき、SNS広告で同じ宣伝文句を何度も見たり、比較サイトで似た口コミを繰り返し読んだりすると、「これだけ見かけるなら確かだろう」と感じることがあります。しかし、表示された回数や見慣れている感覚は、その主張が正しい証拠にはなりません。
判断するときは、まず広告や口コミが伝える主張を一文にし、誰が、どんな条件で確かめた情報なのかを調べることが大切です。繰り返し見たという印象と、独立した根拠があることを分けて考えます。
繰り返し見る広告や口コミが、なぜ確かに思えるのか
例えば、マーケティング担当者が新しい集客ツールを比較しているとします。あるツールについて、SNS広告、比較記事、口コミ欄で似たような「問い合わせが増えた」という言葉を見かけると、複数の人が確かめた話のように感じるかもしれません。これは説明用の仮の場面です。実際には、どの記事も同じ事業者の発表を引用している可能性があります。
心理学では、繰り返し触れた文は初めて見る文より読み取りやすくなり、その読み取りやすさが「正しそうだ」という評価につながる場合があると考えられています。「真実性の錯覚」と呼ばれる現象です。内容が見慣れていることと、裏付けが増えたことは別です。
同じ文を見た人は、正しさをどう評価したか
Fazioら(2015)は、大学生40人に一般知識に関する文を見せ、以前に読んだ文と初めて見る文の真実らしさを比べました。誤った文でも、先に見たもののほうが真実らしさを高く評価されました。実験後の確認問題で正しい知識を持っていると分かった項目でも、反復による評価の差が見られました。
また、Pennycookら(2018)は、SNSの投稿に似せた本物と架空のニュース見出しを使ったオンライン実験で、一度見た架空の見出しは、初めて見るものより正確だと評価されやすいことを確認しました。別の実験では、1週間後にも反復の影響が見られました。一方、「地球は完全な四角形」といった極端にあり得ない文では、反復による正確さの評価の上昇は確認されませんでした。
これらの研究が調べたのは、一般知識の文やニュース見出しに対する判断です。広告や口コミを何度見れば購入するのか、すべての職場で同じ影響が生じるのかを直接示したものではありません。広告や口コミを点検する際の、判断の偏りに気づくための手がかりとして考えます。
なお、商品名を見慣れることで好感が変わる可能性については、単純接触効果の解説で扱っています。「好きになった」と「説明内容を事実だと信じた」は分ける必要があります。
広告や口コミの根拠を確かめる4つの視点
- 発信元は本当に別々か。 公式広告、比較記事、紹介投稿に同じ文言が出ていても、情報の出どころが一つなら、独立した確認が三件あるわけではありません。元の調査や発表に戻り、転載や広告掲載、提供関係がないかを確かめます。
- 数字は何を比べたものか。 「問い合わせが2倍」なら、どの期間とどの期間を比べたのか、何社の結果なのか、件数の定義は同じかを調べます。広告費やほかの施策も変わっていれば、ツールだけの成果とは決められません。比較条件の書かれていない数字は、判断材料として保留します。
- 口コミはどんな利用経験に基づくか。 投稿日、実際の利用場面、利用期間、具体的に良かった点と困った点を確認します。提供品や謝礼など投稿者と事業者の関係が分かる表示も見ます。消費者庁の口コミに関する注意喚起も、投稿者と商品・サービスの関係を見極め、口コミだけで判断しないよう求めています。
- 自社の条件と合うか。 口コミに書かれた利用者の事業規模、顧客層、導入目的、費用や運用体制が自社と違えば、同じ結果になるとは限りません。米国FTCのオンラインレビューの確認案内も、複数の情報源を見比べ、投稿時期や投稿者の履歴を確かめることを勧めています。
同じ話が多くの場所に載っていることは、情報が広く流通している証拠にはなります。しかし、それだけでは何人が実際に使い、どれほどの結果を得たかは分かりません。反対に、根拠をすぐ示せない口コミがすべて虚偽だとも言えません。
確認した結果を、集客ツールの選定にどう生かすか
ここからは、研究と公的機関の案内を参考に考えた実務上の提案です。この手順によって誤判断が必ず減ると直接検証されたものではありません。
仮の例:集客担当者が予約管理ツールを探しているとき、広告と二つの比較サイトで「導入後に問い合わせが2倍」という主張を見たとします。「2倍」はこの例の架空の数字であり、実在する商品の実績ではありません。
- 主張と見かけた場所を記録する。 「導入後に問い合わせが2倍」を一つの確認対象として書き出し、広告と比較サイトの掲載元を控えます。三回見たことを、三つの検証結果と数えないためです。
- 同じ発表の引用かをたどる。 二つの比較サイトが同じ企業資料を引用していれば、元資料を一つの根拠として扱います。独自に調べた記事があれば、対象と調査方法を別に確認します。
- 数字の条件を問い合わせる。 「どの企業を何社調べたのか」「導入前後の何か月を比べたのか」「問い合わせ件数の集計方法は同じか」「広告費などほかの条件は変わったか」を確認します。回答できない項目は未確認として残します。
- 分かった内容で扱いを変える。 元データと比較条件が確認でき、自社にも近い条件なら候補として比較します。情報が足りなければ効果を前提とした予算決定は避け、追加資料を求めるか、期間と評価指標を決めた小規模な試行を検討します。資料と主張が食い違うなら、その数字を採用しません。
自社が広告や紹介資料に口コミを引用するときも、同じ考え方が役立ちます。掲載回数や引用件数を根拠の強さと取り違えず、元の発言、利用条件、事業者との関係を確かめ、確認できた範囲だけを伝えます。
参考文献・出典
- Fazio, L. K., Brashier, N. M., Payne, B. K., & Marsh, E. J. (2015). Knowledge does not protect against illusory truth. Journal of Experimental Psychology: General, 144(5), 993–1002. 一般知識に関する文の反復と真実らしさの判断、知識がある場合の結果の根拠。
- Pennycook, G., Cannon, T. D., & Rand, D. G. (2018). Prior exposure increases perceived accuracy of fake news. Journal of Experimental Psychology: General, 147(12), 1865–1880. 架空ニュース見出しの反復、1週間後の確認、極端に非現実的な文での結果の根拠。
- 消費者庁(公開年の記載なし)「口コミトラブル」。口コミ投稿者と事業者の関係、口コミを鵜呑みにしないための確認の根拠。
- Federal Trade Commission (2022). How To Evaluate Online Reviews. 複数の情報源、レビューの新しさ、投稿者の情報を確認する実務上の参考。