自分に似た候補者を高く評価してしまう|採用基準に立ち返る方法

採用・評価・人材育成
Psychology Laws 編集部

採用面接で、候補者が自分と同じ業界で働いていたり、仕事の進め方が似ていたりすると、話が弾むことがあります。「考え方が合うから、一緒に働きやすそう」と感じたとき、その親しみやすさを採用評価に含めてよいのでしょうか。

自分と似ていることと、今回の職務に必要な能力があることは分けて考えます。親近感を覚えること自体は問題ではありません。ただし、その感覚が評価の理由になっていないか、候補者が実際に示した行動や経験を、面接前に決めた職務基準で確かめる必要があります。自分と似ていない候補者にも、同じ能力を示す機会を与えたか確認します。

共通点があると、なぜ「仕事もできそう」に見えるのか

以下は説明用の仮の場面です。営業企画職の採用で、面接官は候補者Aさんと同じ業界の経験や仕事の進め方に共通点を見つけました。会話が弾み「現場を分かっている」と感じました。候補者Bさんは異業界出身で、面接官との共通点は少なかったものの、顧客への調査から改善案を考えた経験を具体的に説明しました。

この場面で分けたいのは、Aさんとの共通点を感じたことと、今回の仕事で顧客の課題を調べ、根拠に沿って企画を考えられることです。同じ業界の経験は職務上の参考情報になる場合がありますが、同じ趣味や話し方、似た考え方だけで業務能力を確かめたことにはなりません。

人は自分と似た相手に親近感を持つことがあります。Abbasiらの系統的レビュー(2024年刊行、2023年オンライン公開)では、職場での類似性と対人関係を調べた45論文・49研究が分析されました。職場でも似ている相手への好意や近さとの関連を示す研究が多い一方で、逆方向の結果や、ほかの条件で影響が変わる研究もありました。一時点で測定した研究が多く、類似性が好意の原因と確かめられたとは限りません。

好意によって評価基準の重みが変わり得る仕組みは、サイト内の好意が判断に与える影響の解説でも扱っています。ただし、共通点があるという事実だけで、ある面接官の採用判断が偏っていると決めつけることはできません。

面接の研究でも「似ていれば必ず有利」とは限らない

Goldbergの2005年の採用面接研究では、面接官と候補者の属性の類似が評価や内定提示と関係するかを調べました。白人の面接官については人種的な共通性と面接評価・内定提示との関連が見られた一方、年齢が似ていることには関連が見られませんでした。性別については、同じ性別より異なる性別であることが評価に関係する結果もありました。面接官が感じた類似性や好意が、一部の関係を説明する可能性も示されました。

この研究が示すのは、類似性の種類や面接官の条件によって結果が異なるということです。すべての面接官が自分と同じ属性の人を優先するという意味ではなく、特定の候補者の合否が親近感だけで決まったと断定できるものでもありません。

DalessioとImadaの1984年の現場研究では、37人の応募者が5人の面接官による構造化された集団面接を受けました。面接官本人への類似と、面接官が思い描く理想の社員像への類似を比べると、最終判断とは後者のほうが強く関連していました。ただし、その「理想の社員像」が職務に必要な要件を正しく表しているかは、この結果だけでは分かりません。

自分に似ている候補者への好意が評価を左右する可能性には注意が必要ですが、共通点がある候補者を低く採点し直せばよいわけでもありません。職務の基準から説明できる評価なのかを確認することが重要です。

質問や採点の方法をそろえると、何が比較しやすくなるか

Campionらの1988年の研究では、職務分析をもとに質問を作り、すべての応募者に同じ質問をし、具体例の付いた採点基準に沿って複数の面接官が記録・評価する方法を検討しました。製造現場の初級職の採用で調べたところ、面接官間の評価の一致や、入社後の成績との関連が確認されました。

この研究は、面接官と候補者が似ていることによる影響を直接取り除いた実験ではありません。それでも、親しみやすさではなく回答の根拠で比べるための方法として、共通の質問、職務に沿った評価項目、記録の準備が考えられます。

親近感と職務能力を分けるために確かめること

候補者と話が合い、高評価を付けたくなったときは、次の点を確かめます。

  • 共通点は職務に関係するか:趣味、出身校、話し方などの共通点は、それだけでは仕事の能力を示しません。同業界の経験であっても、何の知識や技能を使ったのかを聞き、採用要件に照らします。
  • 高得点を裏付ける回答はあるか:「自分と考え方が合う」「すぐなじめそう」だけが理由になっていないでしょうか。何の質問に対し、どの行動を説明したから基準を満たしたのかを確認します。
  • 質問の機会は公平だったか:似ている候補者には話を深掘りし、ほかの候補者には短く質問を終えていないでしょうか。追加質問で何を確かめたかったのか、全員に同じ能力を示す機会があったかを見ます。
  • 違うやり方を不利に扱っていないか:面接官自身の方法と違っても、職務で求める水準を満たせる場合があります。「自分ならそうしない」と感じたときは、採用基準との違いを説明できるか確かめます。
  • 記録していない不明点はないか:好印象の候補者にも、まだ聞いていない技能や経験があるかもしれません。「できそう」を「確認済み」に置き換えず、不足する情報を明記します。

厚生労働省の「公正な採用選考の基本」は、応募者が職務を遂行するために必要な適性・能力を基準にすることを求めています。本籍や家族の職業、思想・信条といった、職務能力と関係のない事項を把握しようとすること自体が選考に影響するおそれも指摘しています。親近感を作るために、職務に関係のない私的な情報を質問する必要はありません。

「自分と合う」から採用基準へ戻す具体的な手順

ここからは、上記の研究と公的な指針を参考に考えた実務上の提案です。手順全体が、どの採用現場でも同じ効果を持つと直接検証されたわけではありません。

  1. 面接前に、仕事に必要な能力を行動で定義する。営業企画職なら「顧客の課題を具体的に調べる」「複数の情報から提案を組み立てる」「関係部署と調整する」などと定めます。項目ごとに、どんな回答なら基準を満たすのかも決めます。
  2. 全員に職務に関係する共通質問をする。「顧客の要望と自社の見立てが違ったとき、何を確かめて提案を決めましたか」などを用意します。追加質問が必要なら、その項目を判断するのに何が足りないのかを明らかにします。
  3. 親近感ではなく、回答された事実を記録する。仕事で取った行動、使った情報、判断の理由、まだ分からない点を書きます。「同じ趣味だから話しやすい」といった私的な共通点を採用評価の根拠や記録にする必要はありません。
  4. 面接官は相談する前に項目別の評価を記入する。複数の面接官がいる場合、まず各自で回答と点数、その根拠を残します。「この候補者とは考え方が合う」という言葉を使わずに、なぜその点数か説明できるか確かめます。
  5. 採用会議では似ているかどうかではなく、職務上の証拠を比較する。点数が割れたら「どの回答を、どの評価項目に当てはめたか」を確認します。大切な項目が未確認なら、追加の共通質問や仕事に近い課題を公平に設ける余地を検討します。

候補者二人を比べる記録例

以下はすべて説明用の仮の例です。採用基準は「顧客の課題を把握し、根拠に沿って改善案を考えられるか」とします。

候補者 職務に関して確認できたこと まだ判断できないこと
Aさん(面接官と同じ業界の経験あり) 業界の商習慣と顧客対応の担当経験を具体的に話した 顧客の課題を何から判断し、提案をどう選んだかの説明が不足
Bさん(異業界の経験あり) 顧客への聞き取り結果を整理し、複数案を比べて改善した過程を話した 今回の業界固有の条件を理解し、対応できるかは追加確認が必要

この記録だけでAさんとBさんの合否は決められません。必要な能力を同じ基準で見て、何が分かり、何が不足しているかを比べるための例です。Aさんに親近感を覚えても、Bさんとの共通点が少なくても、職務の要件に関係する事実から判断します。

採用会議では「その点数は、候補者のどの行動を根拠にしましたか」「同じ能力を違う方法で示した候補者にも同じ評価ができますか」と問いかけられます。自分と似ている候補者への好意を無理に否定する必要はありません。親近感と能力の証拠を分け、職務に必要な基準へ戻ることが、公平な選考に近づくための出発点です。

参考文献・出典